調理師免許試験の押さえておくべきポイント

料理が好きな方の中には、仕事として料理をするために調理師の資格を取りたいと思ったことがある方がいらっしゃるでしょう。
調理師資格を取ると免許をに関わる仕事として、飲食店のほかにも宿泊施設・学校・病院・社会福祉施設・事業所などさまざまな場所で従事することができます。
公益社団法人全国調理師養成施設協会は、調理師に対して、1年おきに「調理師就業届出状況」の提出を求めています。その中で、2018年(平成30年)の統計によると、全体の36%が飲食店に勤務していることが分かっています。社会福祉施設が25.2%、学校も20%という数値が発表されており、就業先の選択肢が幅広いことが分かります。
そんな調理師免許を取得するためには、どのようなポイントを押さえて勉強するとよいのか、また調理師免許試験の詳細などを、詳しく解説します。

調理師免許を取得するには?

調理師免許を取得する方法は2通りあり、それぞれの方法について詳しく解説します。

専門学校などに通って学び取得する

ひとつ目は、調理師の知識を学べる教育機関に通って学び、卒業後申請する方法です。
この方法では、調理師試験を受けることなく調理師免許が取得できます。

選択できる教育機関は、専門学校(1年制または2年制)、短大、四年制大学、高校、職業能力開発短期大学校のいずれかです。
これらの教育機関で、調理科などのクラスに所属して学んでいきます。
機関の中には夜間クラスを設けているところもあり、昼間に働きながら通っている人もいます。
学費はかかりますが、確実に免許を取得できます。

実務経験を積んで取得する

ふたつ目は、教育機関には通わず、飲食店や各種調理施設などで2年以上の調理実務経験を積んだのち、試験を受ける方法です。
試験は、各都道府県が実施するもので、実務経験を証明するには証明書の提出が必要です。
調理実務は、正社員でなくとも、アルバイトやパートなどでも認められます。

調理師免許とはどういうもの?

調理師免許とは、調理に関する技能や知識、食品の栄養および衛生など、食についての理解が深く、確かな技術を持つプロであることを証明する国家資格です。
調理師法の中で、調理師は都道府県知事の免許を受けた者と定められています
つまり、調理師は社会的に信用が高く、そのうえ責任が重い職業であり、人々の食の安全を守る使命が与えられているのです。

調理師には次のような役割が求められると言われています。

  • バランスがよい食事を提供し、健康増進に寄与する
  • 安全な食品を選んで衛生的に調理し、食の安全性を確保する
  • 伝統的な調理の技術や様式などを受け継ぎ、さらに新たな調理法を生み出すことで、食文化を継承する
  • 食の背景にある環境や、食と健康の関係性を理解し、人々に伝える「食育」を提唱する
  • 美味しい食事と空間を提供し、人々に喜びや心の豊かさを感じてもらう

飲食店などで仕事をする際に、調理師免許を持たなくとも従事することは可能です。
ただ、採用時に調理師免許を必須としている職場も増えているうえ、調理の確実なスキルを証明できることから、免許を持っていると職場やお客様からの安心や信頼を受けられるのです。

調理師免許を取得するメリット

調理師免許を取得すると、具体的に次のようなメリットがあります。
ここではひとつずつ詳しく解説します。

就職に有利になる

調理師免許を持っていると、調理の技術と食の知識を確実に身につけていることが証明されるため、就職後即戦力になりやすいのがメリットです。
飲食業界では、募集時に調理師免許の保持が条件とされているケースも増え、免許がないと就職の幅が狭くなってしまう恐れもあります。
さらに、将来独立や開店を目指すときに調理師免許を持っていると、「食品衛生責任者」の講習会が免除され、申請のみで責任者の免許取得が可能となります。
講習会の受講時間と費用負担が不要なので、その分開店準備に時間や費用を費やせるようになります。

給料や待遇がよくなる

調理免許を持っていないと、最初は洗い物などを中心とした業務になることが一般的であり、給料も他の人より低くなってしまう可能性が高まります。免許があると、技術や知識を明確にできるため、最初から調理の担当を任されたり、資格手当を上乗せしてもらえたりするので、給料が上がりやすくなります。

店の信頼度があがる

調理師がいることで、専門知識を有したうえでお客様に料理を提供していることが証明され、安心・安全だという印象を与えられます。
このことで店の信頼度があがって顧客獲得につながり、安定な店の経営を目指せるようになります。

調理師試験の受験資格は?

調理師学校以外は、実務経験が必要

調理師の専門学校に通うのではなく、実務経験を積んで試験を受けようとする際には、中卒以上かつ飲食店などで2年以上の実務経験が必須です。
正社員でなくとも、「週4日以上の勤務で、かつ1日6時間以上」勤務していれば、パートタイマーやアルバイトでも問題ありません。

また、2年以上という実務期間は、複数の店舗の合計期間でも認められます。
受験する都道府県によっては、受験できる勤務条件が「週5日以上かつ1日5時間以上」または「週6日以上かつ1日4時間以上」などと定めているところもありますので、あらかじめ調べておきましょう。

実務経験として認められるのは、調理師法施行規則第4条に明記されていますが、具体的には次の業務が該当します。

飲食店の営業

食品を調理する営業と、飲食スペースを設けて顧客に飲食を提供する営業があります。一般的な飲食店に加え、旅館や簡易宿泊所なども含まれます。

魚介類販売業

店舗を設置し、鮮魚介類を扱い販売している業種を言います。ここで刺身などを調理している業務を担当していると、実務経験と認められます。魚介類が生きたまま販売されている店舗や、せり売りでの営業などは除外されます。

惣菜製造業

佃煮を含む煮物・焼き物・揚げ物・炒め物・蒸し物・酢の物・和え物などを製造している業務をさします。

学校、病院、寮などの給食施設

この施設での実務経験は、継続して1回20食以上または1日50食以上調理している施設であることが条件とされています。

これらの基準を満たしていないと、調理師試験を受験できなくなります
基準を満たせない場合は、勤務先を変えるなどの対策を採らないといけません。

調理師試験を受ける前に確認しておくべきこと

試験を受ける前には、勤務先の飲食店が、先にご紹介した基準に該当するかどうかを必ず確認しておきましょう。
飲食店の中には、2年以上勤務しても基準に該当しない施設もあります
せっかくの2年間を無駄にしないためにも、調理師試験の募集要項を満たす施設かどうか、応募時点での確認が重要です。

受験資格として認められない職歴とは

条件に該当する施設で勤務していても、あくまで「調理業務」に従事していることが受験資格とされています。
このため、ホールスタッフ、食器洗い、配達などの業務が資格として認められません
同じ理由で、料理学校などの調理指導者、企業などの食品開発研究者も、資格の対象外となっています。

また、外国の飲食店での勤務期間はカウントされないほか、定時制・通信制以外の高校に在学中での勤務期間も、受験資格とならないので、注意が必要です。

調理師試験の概要について

調理師試験は、都道府県ごとに実施されており、受験日や受験会場の数も都道府県ごとで異なります
おおむね年1回の実施ですが、2回行われる場合もあります。
悪天候の場合はこの限りではありませんので、実施団体の指示に従いましょう。

受験会場が複数設定される都道府県では、希望会場を選択できるところとできないところがあります。
受験料は、都道府県によって若干異なり、6,100円から6,400円ほどとなっています。
詳しくは、受験を希望する都道府県の受験実施先へ確認しましょう。

調理師試験の出題傾向は?

調理師試験には実技試験がなく、四肢択一式の筆記試験マークシート方式で行われます。
公衆衛生学・栄養学・食品学・食品衛生学・調理理論・食文化概論の6科目から出題され、問題数は60問以上となっています。

合否判定は全科目の合計得点で行い、60%以上が合格ラインとされています。
ただし、1科目でも平均点を大幅に下回ったり0点であったりすると、不合格となってしまうのです。
このため、6科目ともまんべんなく勉強することが秘訣です。

調理師試験は、住んでいる都道府県以外でも受験できるため、試験日が異なる受験会場であれば再チャレンジが可能です。
チャンスが多いと、それだけ合格の可能性も高まりますので、前もって近隣の都道府県での試験日程を調べておくとよいでしょう。

調理師試験の難易度は?

調理師試験の内容について解説してきましたが、実際に受けた方の合格率はどのくらいの数値で推移しているのでしょうか。

合格率

2020年度(令和2年度)に行われた調理師試験において、全国の合格率平均は70.2%でした。
資格試験の中では、合格率は比較的高いと言えるでしょう。
直近10年間における全国平均合格率は60%以上で推移しています。

都道府県別合格率

つづいて、2020年度(令和2年度)における、各都道府県の合格率もご紹介します。
問題数や内容は、都道府県ごとで異なります。

都道府県合格率
北海道63.9%
青森県63.0%
岩手県61.1%
宮城県66.3%
秋田県69.0%
山形県77.0%
福島県86.1%
茨城県68.4%
栃木県66.8%
群馬県79.8%
埼玉県76.2%
千葉県69.7%
東京都73.2%
神奈川県82.4%
新潟県73.9%
富山県69.3%
石川県72.5%
福井県63.0%
山梨県70.5%
長野県75.2%
岐阜県67.1%
静岡県82.5%
愛知県72.0%
三重県58.4%
奈良県57.8%
関西広域連合
(滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・和歌山県・徳島県)
73.7%
鳥取県68.8%
島根県65.3%
岡山県67.4%
広島県69.3%
山口県82.4%
香川県64.4%
愛媛県51.9%
高知県62.2%
福岡県69.0%
佐賀県62.6%
長崎県59.6%
熊本県58.2%
大分県69.7%
宮崎県68.0%
鹿児島県63.8%
沖縄県45.4%

出典:厚生労働省|調理師試験の実施状況(令和2年度)

独学でも合格できるのか

独学でも、調理師試験への合格を目指すことができます。
試験の受験条件のひとつとなる学歴は、義務教育を修了していれば問題ありませんので、学歴面ではほとんど問題にならないでしょう。
試験科目は、先ほど解説した6科目から出題されます。
2015年までは、衛生法規を含めた7科目からの出題でしたが、2016年度からは他の科目に含まれる形式へと再編されました。

いずれの科目も、専門的かつ広範囲であり、働きながら独学で勉強するのは簡単ではありません。
しかし、書店で販売されているテキストや通信教育、調理師試験の公式サイトに掲載されている過去問題などを取り組むことで、合格が可能です。
一方で、実務経験に関しても、受験資格に該当するかどうかをしっかり確認しておきましょう。
雇用主から、調理業務従事証明書を発行してもらい、提出する必要がありますので、併せて準備が必要です。

学習時間はどれぐらい必要?

調理師試験に向けての学習時間は、3ヶ月から半年の間、毎日1時間から2時間の学習が目安です。
仕事をしながら学習する場合は、毎日1時間ずつ半年続ける計画が現実的でしょう。
1科目を1ヶ月で学習する方法もありますが、試験当日までまんべんなく知識を持ち続けるには、半年の間に少しずつ6科目を学習するのがよいでしょう。

調理師試験には記述問題がなく、すべて選択式で解答します。
短期間で学習したいと思えば、その分集中力をあげて取り組むことや、効率的な教材で学習することで、合格という結果につなげられるでしょう。

調理師試験を意識した勉強法としては、まず教科書全体を把握し、苦手と感じる箇所をピックアップします。

次に、苦手な箇所を中心にテキストを読み込み、知識を得ていきましょう。
試験の1ヶ月ほど前から過去問題に取り組み、最終的に調整をしたうえで当日を迎えると効果的です。

調理師免許試験の知っておくと便利なポイント 

先述のように、調理師試験は何度でも受けることができます。
都道府県ごとに実施され、受験する県の制限はありません。

つまり、受験日程が重ならない限り、どの都道府県で受験しても問題ないのです。
試験内容は都道府県ごとで異なり、一度チャレンジして不合格であっても、ほかの場所で再チャレンジできます。

当然ながら、受験するごとに受験料はかかります。
しかし、受験のチャンスが増えれば、その分合格できる可能性も高まりますので、前もって複数の都道府県における受験プランを立てておくと安心です。

最初の受験場所を、なるべく日程の早いところにするのもひとつの方法です。
こうすると、他の場所を受けるチャンスをさらに広げられます。

調理師免許は更新制度がありませんので、一度取ると一生資格を持ち続けることができるのです。
就職だけでなく、家庭における調理でも調理師の知識を大いに役立てられるのは、大きなメリットです。

調理師試験に確実に合格するには

調理師試験に合格するには、6科目をまんべんなく学習するのが重要なポイントです。
6科目の中でも、食品衛生学は細菌に関する知識が含まれるため、苦手と感じる人が多いようです。
特に、独学で勉強しようと考えている方は、分からないことがあったときにすぐ聞ける相手がいないことに不安を感じているかも知れません。
また、勉強に対するモチベーションを保つのが大変な場面もあるでしょう。
調理師の教育施設に通うと、試験を受けなくとも免許を取得できますが、時間が拘束されるうえ、まとまった金銭が必要となってきます。

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